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2020年2月 7日 (金)

芸人の寿命

 昨夜友人の配慮で試写会に行った。ジュディ・ガーランドの晩年を描いた米国映画『ジュディ』である。副題は〈虹の彼方に〉。若い人は知らないだろうが『オズの魔法使い』というミュージカル映画で一世を風靡した。子役である。概して子役は大人俳優を食う。ジュディも同じで天才子役ともて囃された。戦後の敗戦国にもその人気は伝播した。アカショウビンもその余波で観たのである。他愛のない奇想で彩られた作品で黒人作家ジェームス・ボールドウィンは非肉の一つも書いていたのではなかったか。もっとも人気を博したのは主演したジュディ・ガーランドが歌う「虹の彼方に」だろう。作品でもこの曲が彼女の一生を左右した運命の曲である事に焦点を合わせている。その経緯を知らなければこの作品の含意は伝わらない。若い人たちにはその幾らかでも伝わったか知らない。しかし試写が終わり静かな拍手があった。おずおずとも慎ましくとも思えるものだった。含意は伝わったと思えた。聞けば主演女優はアカデミー賞の最右翼というらしい。さもありなん。熱演である。

 これを観て直ぐ連想したのが十年くらい前にフランスで作られたエディット・ピアフの一生を描いた映画である。これも主演女優の熱演が痛烈だった。駆け出しのマリオン・コティヤール。多くの賞を取り今やベテランであろう。こちらはレネー・ゼルウィガー。既にベテランである。女優として期すものがあったのかもしれぬ。ジュディに似せて難役をこなしたことはよくわかった。米国の評価も似たようなものと察する。

 ジュディ・ガーランドは47年の生涯である。ピアフも同じくらいか。先日読んだ矢野誠一の圓朝伝で芸人たちは若死にが多い。多くが酒、女、博打の放蕩による。61歳まで生きた圓朝は未だ長生きのほうである。洋の東西を問わない。モダンジャズメンはそれにヤク覚醒剤が加わる。芸人は多くが若死になのである。長生きした芸人はロクな者がいないというのは言い過ぎである。志ん生、文楽、円生は長生きだったからだ。しかし天才と囃され若死にした者が多いのも事実。持て余す才能を燃やし尽くすという生き様があるのだろう。ジュディ・ガーランドの場合、子役時代から大人たち映画制作者たちから拘束された生き方を押し付けられた不幸というのが作品の根底にあるメッセージかもしれぬ。しかし哀れであるが芸人らしい一生ともいえる。その悲哀のいくらかを作品は伝え得たのかもしれぬ。それを最後の拍手にアカショウビンは看取した。

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