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2019年1月 1日 (火)

最悪な時代

 『ダンシング・ベートーヴェン』のなかでイスラエル・フィルを指揮しこの公演に参加した指揮者のズビン・メータはモーリス・ベジャールの娘の質問に答え、この時代は過去300年間で最悪な時代だ、とシリアやイラクの現状を引き答えている。小澤征爾のインタビューでの思いもそれと共振するだろう。

 アカショウビンは昨年公開された『私はあなたの二グロではない』(ラウル・ペック監督)という映像で米国での黒人、白人の抗争を見てそれを痛感する。小澤征爾が居を据え活動したボストンや米国各地で小澤は生のアメリカという国を熟視した筈だ。それは一人の有色人種が白人社会で音楽を介して渡り合うということである。差別や冷笑、嘲りもあっただろう。其の中で小澤は確固たる地位を築いた。それは日本人、東洋人の誇りである。メータもしかりだろう。そのコメントは一人の指揮者も社会と切り結び生きているということだ。彼らの音楽で精神を鼓舞されるアカショウビンも多くの音楽好きもそうだろう。そこで悩み、救われ、精神を活性化させる。それが人間という生き物の不可思議なところなのだ。

 『私はあなたの二グロではない』で作家のジョージ・ボールドウィンが語る話もメータや小澤征爾の語りと間違いなく共振している。それは現在の米国でも日本でも九割の白人、日本人に理解されない事実と歴史だろう。しかし人間の歴史には時に光明が射す。その一瞬の光はベートーヴェンが最期の際に見た光かもしれない。しかし、それは意志があれば、現在を生きる私たちにも可能かもしれない。その意志は人それぞれに千差万別の勁さを求めるだろうが、それに応える価値は間違いなくあるとアカショウビンは信ずる。

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