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2018年11月22日 (木)

老いと労働

 アルバイト仲間の姿はそれぞれ。若い連中とは世代間ギャップもあるが真面目に生きている奴にはエールを送りアドバイスの一つもかける。しかし、面倒な会話はしたくないという面々もいらっしゃる。そういう方々には言葉を選ぶ。同世代の皆さんとは共通の話題で盛り上がる。先日はロックの話で面白かった。アカショウビンと同じ歳のSさんはプロのドラマー。ロックからジャズ、我が国の有名女性ボーカルのバックバンドのメンバーとして参加もしたと話す。ツェッペリンの日本公演の話など他の仲間も加わり大いに盛り上がった。しかし、短い休憩時間が過ぎれば下層労働の作業に戻る。アカショウビンは飲料水やコピー用紙のピッキング作業で体力勝負。ひたすら黙々と三階の作業に集中する。夜になると一階の搬出現場で商品の仕分け、ラッビッングだ。これまた集中力とスピード勝負。モタモタしているとフォークリフトの責任者から罵声が飛ぶ。
 アカショウビンはこの数ヶ月で慣れたから対応できる。しかし73歳のIさんは、要領を得ずボーッと立ちつくすこともしばしば。それを見た責任者からは怒りを秘めた皮肉のひとつも投げつけられる。老体が思うように動かないのだ。アカショウビンも助けに入るが限度がある。仲間からは陰で冷笑も囁かれる。しかしIさんは4日間の連勤である。金がいるのだ。かつては貿易業で財を成した。しかしバブルがはじけ会社は倒産。家族とも別居。生活費を稼がねばならないのだ。下層労働で日銭を稼ぎ罵倒、冷笑にも耐えねばならぬ。しかし、現場は甘くない。仲間からはもう無理だ。こっちが迷惑だと暗に人変えのメッセージが。かように下層現場の現実は厳しく過酷である。老いの現実はかくの如し。
 本日は歯の治療のため休み。旧棲家近くの歯科医院ヘ。正午に到着すると、ご高齢のお婆さんが受付の若い女性とスローモーションの映画を見ているような会話をしている。言葉も身体の動きも若い人と噛み合わずこちらも心配しながら遣り取りを見守る。帰りはタクシーを呼んでもらい帰られた。付き添いもなく歯の治療とはご事情がおありなのだろう。しかし医院まで通える人は未だマシだ。それもできない潜在高齢者が多くいらっしゃる筈だ。
 前代未聞の高齢化社会に日本は突入している。アカショウビンの日常も日々のシノギだ。アルバイトから帰り床に就けば、そのまま眼を覚まさないかも知れないという不安もチラと脳裏を過る。幸い夜中に排尿で眼を覚ますと、まだ少し娑婆での時を生きねばならぬか、と気合も入れる。それには音楽と映画、読書である。マーラー、ピアフ、ニーナの作品、声で喝を入れ、魂を活性化させるのだ。明日は別の現場に赴く。体調を整え備える。

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