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2018年10月 2日 (火)

老いの本質⑤

 東京新聞夕刊に掲載中の小松政夫さんの「この道」という自伝は楽しみにしている連載だ。昨日はトニー谷を回顧していて記憶が甦った。トニー谷という芸人の晩年が知られて貴重な記録である。トニー谷がエノケン(榎本健一)を〝師匠〟とあがめていた、という。それも日本の芸人伝としてアカショウビンは納得する。トニー谷は小松(以下、敬称は略させて頂く)の舞台を必ず観に来て土産を持参し批評したらしい。年賀状もマメに書いていたようだ。その文面も面白く味がある。ここで引用はしないが芸人同士の本音が窺われて心を震わせる。「芸人はお迎えくるまで稽古あるのみ」という手紙の一節も師匠から受け継いだと推察される後輩への心からのメッセージだろう。

 小松が座長を務めた舞台を突然訪れエノケンの位牌を持参し「オヤジ、小松がね、いい座長になりました」と拝みながら泣いた、という。いい話だ。芸人に限らず、心の通じ合う、人と人の付き合いと芸人師弟の芸の継承というのはそういうものだろう。トニー谷は、その翌年1987年、69歳で亡くなった。晩年の姿が芸を受け継ぐ者によって見事に活写されている。

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