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2016年9月 1日 (木)

病室スケッチ②

  隣のベッドのYさんは明日退院予定。胃がんの手術をされたのか胃婁の処置をされたようだ。夜中に痛みでナース・コールされるのもしばしば。あれこれの薬を器具を通して体内に入れなければならないようで看護師さんの手を借りる。それがカーテン越しに声でわかる。お声や看護師との会話を聞くともなく聞いていると実にお元気。病も達観されているらしいのが声でわかる。娘さん二人とお孫さんも見舞いに来られ会話を聞いていると幸せな家庭なのがよくわかる。声とは不思議なものなのだ。親子の関係、夫婦の関係の真実のようなものが声で瞬間に第三者に伝わる。その真偽に間違いはないように思われる。そのような奇妙な感想になるのも『真理の本質について』(創文社 1995年7月10日 細川亮一訳)を読み継ぎ、読み終えたからかもしれない。それについては別稿で。

  Yさんの達観については声や会話から推測するのであるがそれほど外れているわけでもないことには自信がある。それはどこからくるものか知しれないが経験というしかない。残り少ない人生で、これまで学んだ経験は人を見る目を少しは深くしただろう。それは直観を含めて人がこの世を生きる上で根本的なところで学び取る知恵といってもよい。その推測はおおよそ外れがないのではないか。

  Yさんは70歳過ぎの年恰好だ。ご長女は乳がんを患っておられ同じ病院で治療を続けておられるようだ。隣にいれば、そのような話まで聞こえてくる。声からは親子の情愛の深さまで聴き取れる思いがするのは錯覚ではあるまい。

  もう9月だ。昼前の病室から見える外の風景はいつもと変わらない。高層ビル群の隙間から新幹線やゆりかもめが動く姿が垣間見える。外は暑かろうが病室はエアコンが効いて快適だ。Yさんも処置を終えて落ち着かれたのだろう物音ひとつせず静かだ。

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