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2016年8月28日 (日)

術後4日目

 以前棲んでいた江戸川区のアパートが建て替えられてそこを出なければならないという夢を見た。というより私はそこに存在しその時を生きていた、というのが正確のような。そうなのだ、夢は見るのではなく、夢を生きる、あるいは夢で生きるというのが正しいのではないか。二階の6畳の部屋の廊下に黒いスーツ姿の不動産らしい男たちが押しかけ何事か大声でわめいている。私はその間に割って入り階段から一階に降りアパートをあとにした。

 これは夢のお告げでアパートが本当に建て替えられたのだろうか。しかし、それはどうでもよいことだ。入院で欝々としている時に過去が形を変えて現在にサインを送ってきたということだろう。そのアパートには学生時代、中野の三畳のアパートから引っ越してきたのだ。同じくらいの家賃で都内より広い部屋にということで探したのだろう。近くには銭湯が二つもあり棲みやすいところだった。そこを引っ越したのは叔父夫婦が住んでいた埼玉のアパートを引っ越すので代わりに住まないかという話があったため。二部屋あり一人で住むには十分の広さだった。

 こうして過去を振り返ることも娑婆での生の区切りをつけよという警告の如きものだろう。あまりにのんびりし過ぎているぞ、という。

 夢から覚めると向かいのベッドの患者が呻いている。その声で目覚めたようでもある。時計を見ると夜中の3時過ぎである。苦しむ声が続くのでナースコールで看護師さんを呼んだ。しばらくして声は止んだ。それから眠られなくなった。

 朝の「題名のない音楽会」を久しぶりに見た。そのあと“処置室”へ。既に数人の患者が座って待っている。明らかに平均年齢は70歳を越えている。アカショウビンが一番若い。前頚と後頚の二か所から管を入れ下咽頭のガン摘出部からの出血を器械的に吸い出しているのだが、その前頚からの出血が少なくなったので管を外した。部屋に戻り休息。とにかくだるさが回復しないのだ。きょうの看護師さんは聡明そうな女性。会話のやりとりでそれがわかる。聞くと回復までは数か月かかるという、右腕で重いものが持てるようになるまで。それまでくたばっているかもしれないと茶々を入れると、いえ私が助けてあげますと笑って答えた。その表情と声に聡明さが輝いていた。看護師も百人百様である。

 聡明とは何か、と少し考えたくなったが集中力が続かない。しばらく休憩する。

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