« 縁起的存在論による転居体験 | トップページ | 書評と演奏会レポート »

2016年5月15日 (日)

引っ越しの顛末と新たな出会い

 いやはや引っ越しはひと仕事、ふた仕事の大仕事である。それは生活の外面と内面が疎通する機会とも言える。なぜなら他人からすればガラクタや手紙、葉書などは自分の過去と出会う機会でもあるからだ。それは過去をどう処理するかという契機にもなる。一筋縄でいかないのが引っ越しである。確かにそれは生活の転機だ。今年は下咽頭ガンの告知も受けたアカショウビンの場合、ガンの治療と余命に関わる人生の整理の時でもある。学生さんや栄転で転勤のサラリーマンや公務員さんのように希望にあふれたお引っ越しというわけにはいかない。文字通り一筋縄ではいかない。それは引っ越し先の地理的環境やスーパーなど生活環境の違いと自分の現在と、これからの自分との関わりの問題でもある。胃ガンの手術からは8カ月が過ぎた。下咽頭ガンの治療計画で来週は都内の病院へもいかねばならない。共同生活の期限は1年。その間の不測の事態、来年の引っ越し先も視野に入れねばならない。

 まだ移転先の荷物は整理していないが、引っ越しの顛末を備忘録として記しておこう。

 5月1日(日)、 2tトラックで引っ越し。3日(火)旧居の後片付け。5日(木)、850㎏トラックで前回積み残しの搬送。6日(金)、旧居のガス・ストップの立ち会い、市役所に転入届けと国民健康保険などの手続き。7日(土)、高校時代の同級生K君のお誘いでH市の美術館へ展覧会を鑑賞に。9日(日)、10日(月)、旧居の最終清掃で仲介不動産に鍵を返却。

 同居とはいえ今回の急な引っ越しは、このブログの読者がご自宅の改築で借家しなければならず、そのご厚意によるもの。1年間の期限付きだ。条件は2頭の愛犬の散歩相手と車の運転手。二階の部屋の居候である。その前に彼らとはご自宅で対面した。S君は昨年、骨肉腫で後ろ脚を切断している。先日は都内の動物医療センターへ定期検診に同行した。愛犬といっても2頭とも大型犬。その世話が大変なのは犬を飼ったことがないアカショウビンでもわかる。

 アカショウビンの通っている病院と規模は違えど病院スタッフと飼い主、愛犬の関係は人間の場合と殆ど変らないといってもよいように感じた。とは言え、犬と人間の関係というのは実際に体験してみなければわからないだろう。アカショウビンは、どちらかといえばネコ派である。それで猫を飼っているわけではないから〝どちらかといえば〟といったくらいのもの。しかし飼い主と2頭の犬の生活を見ていると独特といってもよい濃い情愛のやりとりを実感する。それは人間の家族と殆ど同じものかもしれないし、或る意味でそれ以上のものかもしれない。そう考えさせられるほどのものと言ってよい。しかもS君は足を切断している。愛犬へ愛情はひと際厚い。

 幸い術後の経過は順調という診断だったようだ。飼い主の表情の明るさが注がれる情愛を物語っていた。天気もよかった。快晴の空と新緑が目を和ませた。2頭の犬との新しい生活はまだ始まっていないが不安と同時に楽しみでもある。それは同じガン患者としての関心と、同じ生き物として娑婆を去る時の準備期間をどう生きるかという設問を思索するうえでよい契機ともなるだろう。

|

« 縁起的存在論による転居体験 | トップページ | 書評と演奏会レポート »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/111335/63633640

この記事へのトラックバック一覧です: 引っ越しの顛末と新たな出会い:

« 縁起的存在論による転居体験 | トップページ | 書評と演奏会レポート »