« 幻のピアノ・リサイタル | トップページ | 此の世との別れの在り方 »

2016年2月16日 (火)

ピアニストとは何者か

 先日、あまりクラシック音楽を聴かないという若い友人から何かCDをくださいと依頼があった。幾つか選び形見にしてちょうだい、と進呈した。そのなかでもっともリアクションがあったのがマリア・ジョアン・ピレシュ(以前はピリスという表記だったが、こちらのほうが発音に近いのだろう)の若い頃のCDだった。それは嬉しいと今朝はピレシュが若い頃に日本で録音したモーツァルトのピアノソナタ全曲のうち一枚を聴く。若いピレシュの瑞々しい溌溂とした録音が素晴らしい。その勢いで他のピアニストのショパンの作品も幾つか聴いた。アカショウビンが好きなのはマズルカ。とりあえず全曲を録音しているショパン弾きサンソン・フランソワを。う~む、これでは納得できない。ミケランジェリには程遠い。ではルービンユタインは、と探すとCDはポロネーズしかない。それではとレコードを探す。しかし面倒なのでポロネーズを聴く。作品26の一番の出だしの音に腰を抜かしそうになった。まるで政治家が憤り机を叩いて演説しているようではないか。やれやれと思いながら聴き続けるとピアニシモ、ピアノシッシモにはショパンの優美さが聴きとれる。それを聴きながら心安らいだ。

 かように、ピアニストは、さまざま。聴く方には自ずと好みがある。一応は大ピアニストから聴けば好き嫌いが生じてくる。音楽はできるだけ好みで聴く方がいいのだ。しかし時に不快な音を出すピアニストもいるのは仕方がない。入院していた時にボランティアコンサートがあった。こちらは点滴を持ち歩きながら会場に辿りついた。ふくよかな若い女性ピアニストで期待して聴いた。しかし最初のモーツァルトがなっていない。モーツァルトの難しさが身についていない。ショパンはまあまあ。最後はジャズで締め括ったがジャズになっていない。英国の音楽院を卒業した優秀なピアニストなのだが、このような演奏もある。無料のコンサートだから文句をつけるわけにもいかず目礼だけして病室に戻った。

 日本人のソリストはピアノに限らず女性が多い。ヴァイオリンは先のブログで讃嘆した五嶋みどりさんや多くのソリストがいる。そのなかで今や成熟の盛りにあるピレシュの録音を聴く楽しみは冥土の土産以外の何物でもない。

 ピアニストは蛮族というのは中村紘子さんの名言(迷言?)だが、ルービンシュタインのポロネーズを聴くと、なるほどと納得できる。あの激しさがショパンの本質を抉るためには必要なのだ。蛮族とはともかく、ピアニストとは何者か、という問いも生じる。とりあえず幾つかのピアニストの録音を聴くに如かず。ピレシュの瑞々しくも清々しいモーツァルトは娑婆の掛けがえのない妙音であることは実感する。

|

« 幻のピアノ・リサイタル | トップページ | 此の世との別れの在り方 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/111335/63221474

この記事へのトラックバック一覧です: ピアニストとは何者か:

« 幻のピアノ・リサイタル | トップページ | 此の世との別れの在り方 »