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2015年10月12日 (月)

体験版 医療の現在Ⅱ-⑩

 退屈と些かの不安、それに先行きへの焦り、これがアカショウビンの現状だ。退屈とは、チューブを鼻の穴から胃腸に差し込み、圧力差を利用し自動的に中の排泄物やガスを体外に吸い出す装置と点滴をつけて、食事を口から摂ることなく、ひがな一日ぶらぶら暮らすこと。些かの不安とは、このまま退院できるのだろうか、できても再発、転移に加え次は食道ガンの治療で放射線など過酷な治療が待ち受けているのではないかという。先行きへの焦りとは果たして仕事に就けるのかどうか、という焦りとこれまた不安でもある。

 鼻から内視鏡を入れたのが先週の5日(月)、金曜日の9日に点滴が従来のアミノ酸他から現在の滋養のあるものに変わった。「中心静脈点滴専用」と書かれている。鎖骨裏の静脈は中心静脈なのだ。高カロリー輸液で総熱量は820kcal。総合ビタミン剤、アミノ酸、電解質液を供給する。アカショウビンの身体は、この二本のチューブに拘束されている。運動不足はいかんともしがたい。せいぜい院内のコンビニに毎朝、新聞を買いに行くくらい。これでは身体はなまる。とにかくベッドから離れねばならない。

 退屈しのぎに持ってきた音楽CDは再生小型プレーヤーを落としてしまい使用不能。バッハの受難曲などせっかくの機会に集中して聴くつもりがだめになってしまった。術後の無力感で読書欲もあまりない。若い友人が差し入れてくれた月刊誌は拾い読みはした。この機会にと途中までで読みさしにしてあったフーコーの「臨床医学の誕生」(神谷美恵子訳 みすず書房 1969年12月30日) も遅々として読み進まず。

 空いていた隣のベッドには新しい患者さんが入ってきた。まだ午前9時半を過ぎたばかりというのに高いびきだ。あぁ、先が思いやられる。

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