« 懐かしき昭和 | トップページ | ありがとうな、また、会おうの »

2015年8月 5日 (水)

三国連太郎の坂田三吉

 伊藤大輔監督の「王将」はかつて観たつもりだったがアルツハイマーの進行のせいか殆ど想い出せなかった。「王将」の名作は阪東妻三郎(通称、阪妻)。これは将棋ファンとしては見逃せない。しかし三国連太郎の坂田三吉も素晴らしい。というより、小春役の淡島千景が見事で三国を引き立てている。森繁久彌と演じた「夫婦善哉」も、先日見た「日本橋」も、淡島千景という女優の魅力を改めて知らされているところだ。

 冒頭、村田英雄の「王将」が流れる。西條八十作詩、船村 徹作曲の名作である。アカショウビンは、かつて上野のスナックで飲むとラスト・ソングは「王将」だった。地方から東京へ出てきた少年や青年は大阪人に限らずこの心意気をもったものだ。歌詞の通り、明日は東京へ出て行くからは何が何でも勝たねばならぬ、のである。

 将棋の指し方は素人には難しい。その指導には名人に香車を引いた升田幸三が担当したというのも将棋ファンには嬉しい。脇役陣もベテランたちが固める。花沢徳衛、殿山泰司らが務める。音楽は伊福部 昭。これが素晴らしい。黒沢 明がいみじくも語ったように映画とは映像と音楽の掛け算なのである。

 本編は二人の娘と乳飲み子を抱えた淡島・小春が、チンドン屋と並行して通りを歩くシーンから始まる。昭和の風景が懐かしい。娘のたまえが古着屋に自分のベベ(着物)を見つける。父親の三吉は娘の着物を古着屋に売り飛ばし素人将棋大会の参加料に替えたのである。

 この将棋極道がプロになり東京の関根名人に勝ち越すまでに成長する。それは女房を泣かせながら。それが夫婦共に信心に目覚め日本一の将棋指しになる。太鼓を叩き 最初は婦唱夫随、後には夫唱婦随で南無妙法蓮華経とお題目を唱える姿が何とも勇ましく涙ぐましい。伊藤監督の演出が光る。先日の「おしどり駕籠」の不満はこの作品で解消された。

 昨年、仕事で広島へ出張した帰りに大阪へ立ち寄った。以前、通天閣の下の将棋道場で指したのを思い出しながら道場を探したが見あたらず聞けば何年か前に閉めたという。時代の変化に改めて気付いた。来週は手術である。生還すればアカショウビンも新たに闘志をもやし余生を生きたい。

|

« 懐かしき昭和 | トップページ | ありがとうな、また、会おうの »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/111335/62026596

この記事へのトラックバック一覧です: 三国連太郎の坂田三吉:

« 懐かしき昭和 | トップページ | ありがとうな、また、会おうの »