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2015年8月16日 (日)

お茶漬けの味

 小津安二郎監督の「お茶漬けの味」(1952年)を久しぶりに観直した。以前はテープに録画しておいてたまに見たものだ。しかし画質が悪くそれに長尺(115分)。しかし、こちらはデジタル・リマスター版で画質はかなり良くなっている。それに、ここのところ「王将」などで淡島千景を改めて見直しているのでその興味もあった。

 野田高悟との共同脚本は、さすがに良く練られている。笑いの仕掛けも幾つか。主演は佐分利 信、木暮実千代。若い鶴田浩二、小津組の笠 智衆もパチンコ屋のオヤジを演じている。前年の「麦秋」、翌年は「東京物語」と撮っているから笠 智衆が小津作品の中で存在感を次第に増してゆく過程も確認できる。

 今回、発見したのは佐分利 信の役柄の名前が佐竹茂吉になっていることだ。これは有閑マダムという設定の小暮の役と合わせると斎藤茂吉夫婦が一つのヒントになっているものと思う。佐竹は長野県出身となっているがネコ飯(作品では犬が食べるようなとなっているが)の好きな地方出身で海軍の軍歴をもつ。それは後の小津作品にも出てくるお馴染みの設定だ。佐竹は技術者という設定になっているが、茫洋とした実直な性格で仕事に生真面目な姿は、事実はともかく茂吉のようだ。茂吉の「柿本人麿」の読解は途中で中止している。これはそれを再会せよという天の声かもしれない。

 それはともかく、この作品は小津が戦時中1939年、中国戦線から帰国第一作で撮る予定だったという。ところがシナリオが内務省の検閲にひっかかり却下された。それを戦後に設定を変えて出来上がった。周知の通り、小津作品には先の大戦の戦争の影が潜みさりげなく挿入されている。検閲という問題は戦後にGHQが担い多くの作家や画家、芸術家の作品を阻害してきた。このブログでは吉田満の「戦艦大和ノ最期」を介して検閲の問題にも言及した。それはまた別の機会に再度取りあげてみる。

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