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2015年8月 4日 (火)

懐かしき昭和

 マキノ雅弘監督の「おしどり駕籠」(東映)を観て表題のような感想をもった。ひところ同監督を含めて東映任侠映画ばかり観ていた時期があった。この10年の間である。アカショウビンの学生時代にはすでに下火で日活は青春路線からポルノ路線に急展開していた。下宿していた東京・中野には〝ひかり座〟という劇場があって日活や大蔵映画のポルノ映画がかかっていた。新宿には国際劇場という邦洋専門のポルノ映画館があった。その頃は昭和館というヤクザ映画が多くかかっていた劇場も賑わっていた。マキノ作品がそこでかかっていたか記憶はない。アカショウビンが集中してマキノ作品や山下耕作監督などの作品を映画館やDVDで改めて観だしたのはこの10年間である。

 監督独特の演出は随所に見られるがテンポがぬるい。退屈と紙一重のところで作品は支えられている。和製ミュージカル仕立ては配給会社経営陣の営業戦略だろう。「次郎長三国志」でも鶴田浩二ら出演者が歌を歌っていた!こちらのヒロインは美空ひばりである。主演は中村錦之助。音楽は米川正夫。予告ではオーケストラと合唱が指揮者(米川氏本人か不明)のもとに音楽を録音している。  

  冒頭のシーンが凄い。「総天然色 東映スコープ」の横幕文字入り。作品全体のテンポのぬるさは演出と脚本、編集の責任である。原作と脚本は観世光太(以下敬称は略させて頂く)。編集は宮本信太郎。桂長四郎の美術は素晴らしい。三上剛の衣装も。配役は月形龍之助はさすがの貫録だ。セットは任侠映画でも大活躍するマキノ好み。ここで主役とヒロインが何ともまったりした恋のやりとりをする。ひばりの台詞、仕草、所作はマキノの厳しい指導が繰り返されているだろう。それはそれでよいのだが、全体のテンポが今の若い観客にはぬるすぎるだろう。アカショウビンがそう感じるのだから。

  それにしても昭和と平成を映画作品で区別するならこのテンポという音楽用語が有効のように思える。音楽でも大事なのはテンポなのだ。これを微妙に動かし変えて音色(音にも色があるとは!)に色合いを自在に変える。マキノの監督としての統率力は言わずもがな。しかし何とも間の抜けた作品になったのは監督の責任である。

 むしろ日活青春映画のほうがテンポは小気味よい。「いつでも夢を」は吉永小百合、浜田光夫コンビ。たくましく生きる定時制生徒たちの青春を描く。しかし、そこに「キューポラのある街」で突きつけられた在日の問題や少女の性の不安などの社会性や普遍性のある問題意識は欠如している。昭和という時代、少なくとも戦後の昭和には現在の政治状況を含めて政府が隠蔽し国民が健忘症になり、あるいは無意識下に沈められた多くの歴史的事実があることはいうまでもない。

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