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2015年5月 3日 (日)

新聞記事から

 毎日新聞の1日夕刊で下重暁子さんに取材している。アカショウビンには懐かしい人だ。子供の頃にNHKテレビで美しいお姿を見ることが楽しみだった。あだ名を「マダム・ソレイユ」ということは初めて知った。79歳の現在も白の大島紬を着られた姿が美しい。現在のNHK会長をめぐる騒動とは遥か昔の女性アナウンサーの元祖である。いまでは思いも及ばない当時の職業女性の新たな生き方が「私たちの時代は大学を出ても女性の就職先なんかほとんどない。新聞社もとってくれないし、出版社もそう。NHKもアナウンサーとしてだけとってくれたんです」という言葉が当時の就職差別を想像させる。NHKは9年で退社。物書きへの夢をあきらめられず、母校では江戸文学の泰斗、暉峻康(てるおかやすたか)氏の講義を最前列で聴いた。氏は下重さんが社会人になってからも句会に誘った。師から俳句を送られ「動物はけがをすれば自分の舌でなめて治す。人生、甘えちゃいけないんだ。ハッとしましたね」と言う。「先生からは、おまえの句は頭でつくるから色気がない」と言われ苦笑い。30代、40代、50代気の合う作家らと新宿あたりを飲み歩く酒好きだ。近松らしい「恋といふもの男も身をかばうてなるものか」という言葉に、「ときめく人はそれなりにいます」と話し若い人でも20~30歳下の人たちの付き合いを楽しんでいるご様子。キューバから帰ってきたばかりという元気さ。軍事だった父親との確執を小説にする構想もすすめているらしい。中高年も若い世代に負けてはいられない。われわれが来ている時代の歴史は彼らにつたえていく義務がある。

 別面には水俣病の記事がある。水俣病公式確認から59年。2008年に69歳で亡くなった杉本栄子さんを母にもつ肇氏を取材した記事だ。今なお認定結果を待つ患者は熊本県で1007人、鹿児島に548人いるという。あの公害闘争は石牟礼道子さんの作品などを通じてアカショウビンも現在まで継続している。石牟礼さんも、お元気のご様子。水俣地方の方言で水俣病は「天からの授かりもの」と呼ばれていることを初めて知った。ここに人間という生き物がハイデガーが晩年に説いた〝四方界〟という独特の概念が共振する。人間は、この惑星の中で異なる地域の人々と呼応する存在だ。

 水俣の悲劇は、ジャーナリスト達のレポートによれば地球の裏側で繰り返されている。ネットなどで情報は以前と比べられなないほど速くなっている。そこでは千差万別の情報が知られる。しかし肝心なのは現実の私たち、ハイデガーの説く〝現存在〟という用語と共振してわれわれの行為と関連させなければならない。国家と国民の関係性はミナマタから原発への賛否まで人間とこの惑星での動きに熟考を迫る。

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