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2014年11月27日 (木)

悟りとは何か

 先日、仕事で山形県の上山を訪れた。毎年、沢庵禅師の遺徳を偲ぶイベントである。禅師は江戸時代に将軍家光の勘気を被り上山の春雨庵に幽閉された。その間に土地の大根を糠と塩で漬け込み雪深い地元の食として考案した。それが広まり沢庵漬として日本人の食に流通したのである。その功績を地元の人たちが讃え当時の作り方で漬け込み来年に味わう。地元の子供たちや東京の大学からも学生たちが訪れ漬け込みの作業を行った。久しぶりに米沢から上山までの旅を楽しんだ。未だ雪は積もっていないが、あと一月もすれば雪景色で風景は一変する。その頃に訪れる機会があるかどうか未定。

 タイトルは朝のクラシック番組で好きなピアニストの音楽に出会ったことによる。ジョアン・ピレシュ(以前はピリスと表記されていた)がベートーベンのチェロソナタ2番の伴奏をしていた。若い頃に日本でモーツアルトのピアノ・ソナタ全集を録音した演奏を聴いていっぺんにファンになった。その少女も今や円熟の境地である。その演奏会を見られることはアカショウビンの怠惰な日常に一筋の光明をもたらす。その演奏は一人のピアニストが仏教者の悟りの境地のように見られたからである。沢庵禅師は高僧として悟りを開いたことだろう。しかし、ここにピアニストとして悟りを開いたと思われる姿と演奏を聴いたことを記しておきたいのである。

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2014年11月20日 (木)

高倉 健 追悼

 この7年、8年、東映任侠映画をよく観てきた。昨今の日本映画のつまらなさによるものと言ってもよい。かつて三島由紀夫は俳優として映画にも出演しヤクザ映画を評価していたことが、その後も気になっていたからだ。もちろん作品はピンからキリである。三島の評価をすべて納得するわけではない。しかしマキノ雅弘という監督がどういう才覚をもって作品を撮り続けたかということには新たな感想を持った。高倉 健(以下、敬称は略させて頂く)という俳優は、おそらくマキノ雅弘という監督によって骨の髄まで鍛えられ育てられたと思われる。マキノは高倉を健坊と呼んでかわいがりスター俳優に育て上げた。

   映画や芝居、大衆演劇という表現がどういう本質を持つのか、という問いは何かの可能性を開くものと思われる。そこに観客は自らの実存の可能性と不可能性を直感するとも言えるからだ。三島だけでなく、かつての学生たちが一世を風靡した東映任侠映画に強烈な刺戟を受けたことは、観客が映画館から出てくる時は多くが肩をいからせながら出てきたと伝えられたことからわかる。それは此の国独特の歴史の一齣に過ぎまい。しかし、それは映画作品が観客に与える本質とは何か、という問いも引き出す。高倉 健という俳優の人生は、そのような感慨をもたらす引き金にもなった。

 それはともかく、先ずは作品を再観、再々観してから再考しよう。

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2014年11月18日 (火)

露伴の「澀澤榮一傳」

  新刊の「渋沢栄一物語」(田中直隆著 三冬社)を読むと幸田露伴に「澀澤榮一傳」(岩波書店 昭和24年 8月25日 全集第17巻)があることが紹介されていた。何年か前に娘の文さんの著作を集中して読んだが父親の作品は学生時代に少し読んだだけで幾冊も読んでいない。そこで図書館で露伴の全集から一冊を借りてきた。昭和14年5月の日付が記されている。面白い。栄一の家族関係、師匠の先輩格の人物の描写から幕末、維新、明治期の時代の空気が生き生きと描かれている。とかく実業者として多くの経営者に範とされている栄一だが文豪の筆にかかると見事な読み応えのある伝記になっている事に感嘆する。新著では栄一が讃嘆する「論語」の影響の大きさを強調しているが露伴の栄一は実に人間臭さが伝わってくる。斎藤茂吉の「柿本人麿」と共に読む楽しみは格別。さらに引用も行いながら名著を昧読していきたい。

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2014年11月 4日 (火)

日々雑感

 昨日はSNSで知り合った方の記事で、上野の美術館でボストン美術館展を開催している事を知り、北斎の作品が出品されているというので観に行こうとしたが、雑事に時間をとられ行くことかなわず。実は先日、昨年12月に携帯電話から買い換えたスマホを紛失し新たに買い換える作業に時間を取られてしまった。一応、携帯電話は出来るようになったが連絡先は改めて入れ直さなければならない。何とも煩わしい。しかし、仕事や友人たちとの連絡は不可欠。粛々と使い方を習得すべし。同様に自宅パソコンも、とうとうクラッシュし、これまでのデータがアクセスできなくなった。家電店で聞けばデータの移行とメール設定には2~3万円かかるという。先日、昨年の定年から就職活動で税金を払う余裕なく、未払いの分を催促され、とうとう給料を差し押さえられるはめに。市役所に乗り込み折衝し一部を返却させたが残りは未収。家賃も滞納になる。

 何とも娑婆を生きる苦労は絶えない。その中で楽しみといえば好きな映画を見る事と好きな音楽を聴くことだ。映画は友人から頂いたチケットで「ふしぎな岬の物語」を銀座の劇場で観て来たが少々不満。何とも微温的な全体のトーンに焦れた。吉永小百合さんのプロデュースというのでファンとしては必見と思い友人に試写会も頼んだのだが劇場公開のチケットを頂き期待して出かけたのだ。音楽はギタリストの村地佳織が演奏して悪くない。テレビのリサイタル放送では線の細さが不満だった。しかし映像とのコラボは悪くない仕上がりだった。作品中の合唱曲は不満。出演者たちは日本映画を代表する面々が出ているが断片的で主演の吉永さんも全体を支えているとは思えない。

 しかし音楽では以前に購入したCDを面白く聴いて楽しい。ジャズ・ギタリストのグラント・グリーンのリーダー・アルバム「ストリート オブ ドリームズ」だ。1964年11月16日の録音。ラリー・ヤングのオルガンが素晴らしい。エルヴィン・ジョーンズのドラムスも精妙で繊細。ボビー・ハッチャーソンのヴィブラフォーンも。これらのモダン・ジャズを聴く楽しみは、娑婆を生きる稀有の楽しみだ。日々の仕事は時にマンネリに陥る。しかし、そこを抜け出し現実の生き生きとした現存を生き抜かねばならない。茂吉の「柿本人麿」とハイデッガーを読み続けて怠惰な日常に喝を入れるのだ。

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