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2013年10月15日 (火)

竹内栖鳳展を訪れる

  先日、14日まで東京近代国立美術館で開催された竹内栖鳳展の感想を少し書き留めておく。 

2回に分けて訪れた会場各所に展示されている写生帖は画家の視線と眼力を伝えている。屏風絵で栖鳳は花鳥風月に加えて獅子や象、狐狸を描いたのが面白い。屏風に描かれるオランダやヴェニスの風景もこれまた一興。栖鳳の色彩のセンスは水墨に入れた色合いで抜群だ。その典型が舞妓の青であり鮮やかな朱色だ。熊や烏の荒々しい黒も栖鳳の面目躍如だ。水墨の安定した技法、伝統を超克してやるという気迫が漲っている。

還暦に描かれた「酔興」、「馬に乗る狐」も画家の諧謔が溢れて楽しい。新年を祝う酒宴の座興かもしれない楽しさが生き生きと伝わってくる。赤い桶の上の鯉をなぜ「国端」と名付けたのだろう?2頭の虎を「雄風」と名付けたのも不明。しかし水墨の竜虎とは異なる趣を醸し出している。明治時代としか記されていない「瀑布図」の白の空間は大観の「隠棲」の空間を想い起こさせる。水墨の簡素が色を超克した作品と感嘆する。昭和14年の「瀑布」は彩色されているが、これも画家の玄妙な色彩感の面目躍如だ。

明治17年から18年の写生縮図には画家の才覚、才能が横溢している。

「驟雨一過」の樹木の色彩と烏の黒は鳴き声が聞こえてくるようではないか。明治末年、40代後半の作品と記されている「喜雀図」は絶品。「斑猫」の眼と同じく何とも神品の趣を発している。水彩の趣の「風薫双塔図」も新たな画境を伺わせる。中国の旅では欧州訪問より多くのスケッチを残している。水墨で学んだ中国を自らの眼で熟視した成果となって結実したことがわかる。

また渡欧体験から西洋の写実に対抗し写意という概念を生み出したというのも面白い。対象の〝本質〟とは何か。ハイデガーの思索とも絡んでくる。現在3時37分。2品の富士も北斎でも大観でもない栖鳳の富士だ。大小2匹の鯛は「海幸」の画題が付けられているがこれを英訳ではマリン・プロダクツと訳しているのは解せない。海の幸は決してプロダクツではない。

  初期の水墨と屏風絵はやはり才覚を余すところなく作品化して実に見事。高名な獅子図はさすがに風格がある。蝶の写生は田中一村の作品を想い起こした。明治41年、44歳頃の「狐狸」の狸が素晴らしい。獅子や象の肉感よりも。小動物に栖鳳の持ち味は出ていると思う。「寿山福海図」は絶品。海の色合い、峨々たる岩山は水墨のお馴染みの風景だが神品の風格がある。大英博物館に所蔵されているベニスの風景も船を黒々と水墨のタッチで描き霧に霞む異国の風景が野趣を醸しだしてる。ターナーの風景画にも匹敵するのではないか。「雪中蒼鷹図」の樹木の幹の陰影が天賦の才を彷彿させる。「秋興」の鴨の色合い。「アレ夕立に」の舞妓の襟首の首筋と黒髪の濃淡が絶品。「絵になる最初」の舞妓の恥じらいは手首と視線の一瞬を絶妙に留めている。「潮沙永日」の色も栖鳳流だ。「薫風稚雀・寒汀白鷺」の昭和3年(64歳)の雀も絶品。昭和14年(74歳)の「瀑布」は達観の境地も看取するが、これは、といった驚きの作品は「猫」と舞妓と水墨だ。雪舟の模写もあったが雪舟を越えたとは思えない。

昭和2年「小春」の猫は秀逸。「斑猫」はさすがに代表作というだけある。「蹴合」(昭和4年)の軍鶏の戦いは、2~3年前に千葉の美術館で開かれた田中一村展で観た軍鶏も好かった。当然、一村はもちろん栖鳳の作品は知っていただろう。それを意識していたかもしれない。一村が描いた軍鶏は千葉だったと思うが、その後一村が移り棲ん奄美でもアカショウビンが子供の頃は闘鶏が街中で行われていたように記憶する。栖鳳は戦いの激しい動きの一瞬を見事に画布に留めた。23歳の時に描いた「雲龍」は才覚、才能が良く伝わった。33歳の「松虎」で水墨に大型獣を書き込んだ作品は画家が新たな境地に踏み込んだ転機を感じる。屏風の鷺と獅子が、栖鳳が切り開いた新境地ともで言いたい画境だ。鷺の鮮やかな白はともかく、獅子の屏風の背景に沈みそうな色合いを画家は恐れずに描いている。そこに気迫を感じ取る。

午後4時18分。2階から4階まで所蔵ギャラリーへ。ジョルジュ・ブラックの「女のトルソ」とジョアン・ミロの「おおっ、あの人やっちゃったのね」が洒脱でナカナカ。キュビスムや画家の遊び心も栖鳳の写実、写意の作品を見た後では新鮮な味わいがある。

岡本太郎が第五福竜丸の被爆の報に刺激された「燃える人」も太郎ワールドだ。藤田嗣治の4作品もそれぞれ画風が異なり面白い。「リオの人々」、「シンガポール最後の日(ブキ・テマ高地)」の左から射す陽光が戦場の地獄を照らす天上の意志のようだ。「動物宴」は奇矯。「少女」などサイズと画風の違いが一興だ。

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