« 水俣病の今後 | トップページ | 日々、映画三昧 »

2013年10月14日 (月)

愛憎と業と和解

 木下恵介が昭和36年に公開した「永遠の人」を観直した。小津や黒沢の巨匠と並ぶ人間の業を正面から撮った気迫漲る傑作だ。昨今の此の国の浮薄を痛撃する内容に感嘆する。日本映画の底力に眼を瞠る。高峰秀子、仲代達矢、乙羽信子、佐田啓二、加藤 嘉らの名優たちは、此のような作品に出演し鍛えられた事を了知する。日本映画を代表する俳優達が成熟していく一端が垣間見える。

 木下作品の本質は「二十四の瞳」や「カルメン故郷に帰る」にではなく此の作品に凝縮されていると言ってもよい。アカショウビンの女優列伝に高峰秀子は欠かせない。同様に現在も活躍されている仲代達矢さんも、この作品や黒澤作品で名優の階段を昇っていったことが良くわかる。映画という手法でしか描けない人間の業を木下恵介は見事に描き抜いた。「二十四~」や「カルメン~」の作品の底にある木下恵介の人間観は、この作品を凝視しなければ理解できないと言ってもよい。それはドストエフスキーやトルストイの小説にも比肩される世界を描いている。先の大戦を経験した戦中派の人間凝視は、小津安二郎、黒澤 明、とは異なる作風で、この巨匠達の作品の通奏低音となって、鈍く、激しく、静謐に、諦観として表現されている事を改めて了解した。

|

« 水俣病の今後 | トップページ | 日々、映画三昧 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/111335/58381062

この記事へのトラックバック一覧です: 愛憎と業と和解:

« 水俣病の今後 | トップページ | 日々、映画三昧 »