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2012年2月27日 (月)

此の世の苦

 昨夜のNHKテレビで石牟礼道子さんが特集されていた。昨年から今年にかけて、渡辺京二氏の著作に誘われて「苦海浄土」を30数年ぶりに読み直したことは既に書いた。同書の〝天の魚〟の章に登場する、水俣病に罹った母親の胎内で水銀中毒に犯された胎内中毒患者として此の世に生まれた〝江津野 杢太郎〟少年が現在も生きていることがわかった。患者たちの当時の映像は驚倒するしかない。当時、土本典昭監督の作品で見た筈の映像は既に忘却の彼方だったが、改めて視て、此の世の苦というしかない映像に暗澹となる。石牟礼さんは「苦海浄土」の文庫本を持参し彼に読み聞かせる。それを未だ水銀中毒のために話すことさえできぬ彼が理解しているかどうかさえわからないが、二人は何事かの意思疎通を図ろうとする。テレビカメラが回るなかで、それができたかどうかさえ不明だ。しかし少年の祖父母が、彼の将来を心配し語った、石牟礼さんの文章は痛切だ。それは此の世の苦の最たるものの一つである。平凡な日常の繰り返しと溜まる仕事のストレスにへたりそうな毎日に、〝杢太郎〟少年の姿は痛棒を喰らわす。

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