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2012年2月 6日 (月)

タナトス

 先日惜しくも交通事故で急逝したギリシアのテオ・アンゲロプロス監督の作品群の底に流れるトーンは死者たちへの眼差し、というものだ。代表作とも言われる「旅芸人の記録」(1975年)は数年前にやっと観ることができた。そういう感想を持つのは「エレニの旅」(2004年)という作品や「シテール島への船出」(1984年)、「永遠と一日」(1998年)などを観てそう思うのである。独特の長回しのキャメラワークは人によっては退屈でもあろうが、監督独特の語り口に分け入れば作品の狙いは深く観る者を挑発する。「エレニの旅」の後に新作を撮られたようで今年公開されるというので楽しみだ。しかし最新作を今年中に完成させる予定だったというから残念だ。

 ギリシア近代史と現在を往還しながら死者たちへの視線を含みに監督は一見難解な作品を創造してきた。それは松井冬子の作品とも共通すると思われる。松井作品の底にあるのも死への強い関心だ。それは時に幽霊であり死体であるわけだが、巷間批判されるグロテスクなどというものとは作品に正面すれば、まったく的外れなことがわかる筈だ。

 テオ作品と松井冬子作品の間に共通するものはギリシア語のタナトスという語が媒介するようにも思える。いずれにしても作品に接して再考しよう。

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