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2009年8月 6日 (木)

黒木和雄作品を想い起こす

 無職の生活というのは確かに不安に支配されながら時に暗澹たる思いで溺れそうになるということだが、時間の切り売り労働にあくせくすることなく自分だけの時間に浸れるということでもある。この日から15日までアカショウビンも歴史に思いを馳せながら過ごす。日々の労働に追われないことは或る意味で貴重だ。その時間に幾ばくかの充実を込めることが出来るかもしれない。

 この日を迎えると「父と暮せば」(2004年)という作品を想い起こす。2006年4月12日に亡くなった黒木和雄監督作である。原爆で殺された父親が幽霊となって現れ生き残った娘の人生を気遣い会話を交わすという仕掛けである。原作は井上ひさし。アカショウビンは原作を読んでいないが映画を見れば、その完成度の高さから原作の骨格が想像され映像を何度でも視てみたい。それは核廃絶!とシュプレヒコールを叫ぶのではなく、日常生活に非日常を持ち込むことで新たな世界を生み出している。「TOMORROW  明日」(1988年)以来16年ぶりに原爆をテーマに据えた作品である。静かに、かつ饒舌にあの事実に翻弄された親子の姿を映像化している。原田芳雄の熱演、宮沢りえの秀演が胸を打つ。黒木監督の執念の如きものを感ずる作品だ。

 遺作となった「紙屋悦子の青春」(2006年)も先の大戦を生き抜いた鹿児島の或る家族の日常を淡々と描きながら自ずと「戦争」が炙りだされている。ホームドラマのような映像の裏には戦死した家族や戦争で死んでいった亡霊たちが充満している。このような静謐なトーンで最後の作品を撮り終えた黒木和雄という映画監督の生き様にアカショウビンは共振する。

 

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コメント

こんにちは。昨日は爆死した叔母の命日でしたが、60年以上経っても、まだ深い傷を負った人たちも少なからずいます。
先日テレビで、昭和37年頃の映画「その夜は忘れない」を見ました。被爆者を追う新聞記者の話でしたが、その中で、「戦後17年も経てば、忘れる人も多い」というような台詞があり、更にそれから47年経つことを思うと、「日本は戦争したんですか」なんて、まじめに訊く若い人がいても、おかしくはないのかも知れません。
もっと伝える努力をしないといけないなと、あらためて思います。
「父と暮らせば」、私も見ました。
短い感想ですが、ブログにも書きました。

http://juillet.cocolog-nifty.com/lyric/2006/03/post_f49f.html

投稿: Clara | 2009年8月 7日 (金) 午前 11時07分

 Claraさん、コメントありがとうございます。

 >昨日は爆死した叔母の命日でしたが、60年以上経っても、まだ深い傷を負った人たちも少なからずいます。

 ★お気持お察し致します。叔母様やご遺族の戦後の軌跡は如何ばかりか、と拝察するのみです。

 >先日テレビで、昭和37年頃の映画「その夜は忘れない」を見ました。被爆者を追う新聞記者の話でしたが、その中で、「戦後17年も経てば、忘れる人も多い」というような台詞があり

 ★そうでしたか。映画産業の隆盛の頃の作品ですから玉石混交と思われます。

 >更にそれから47年経つことを思うと、「日本は戦争したんですか」なんて、まじめに訊く若い人がいても、おかしくはないのかも知れません。

 ★おっしゃる通りです。私は茶髪やガングロのニィチャンやネェチャンの姿を見ると暗澹たる思いになります。私は「新しい歴史教科書を作る会」の諸氏とは考えを異にする者ですが、歴史に学ばない国民は手痛いしっぺ返しを受けるという考えでは同じです。

 >「父と暮らせば」、私も見ました。

 ★私は最初に観たのは岩波ホールだったでしょうか。その後、黒木監督の追悼特集で池袋の新文芸座で再見しました。未見の「美しき夏キリシマ」との二本立てでしたが「父と暮せば」のほうが秀作だと思いました。遺作の「紙屋悦子の青春」はDVDになっているのでしょうか。この作品の抑制されたトーンには震撼しました。この最後の作品が公開されるのを待たず逝かれた監督は心残りだったかもしれません。しかしそれを観た人々の心には監督のメッセージは深く伝わったことと確信します。もしご覧になっておられませんでしたら是非ともお薦め致します。

投稿: アカショウビン | 2009年8月 7日 (金) 午後 09時56分

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