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2009年8月19日 (水)

老いと病の日々

  自宅療養していた母親が自分で起き上がれなくなり、昨年手術した病院へ再入院させることになった。初めて救急車というものにも乗った。乱暴な運転にはヒヤヒヤした。担当者にもよるだろうが、患者の車への搬送と搬出の動きは、もう少し丁寧にやってもらいたいとも思った。症状を訊ねる若い人は丁寧すぎるくらいの対応で、ありがたかったけれども。

 奄美は殆どが旧盆だが一部の地区と母の故郷の徳之島では月遅れ盆らしい。地元紙の記事によるとブンムケ(盆迎え)と呼ばれていると書いてある。「そうなの?」と聞いたら肯きながら微笑んだ。アカショウビンが子供の頃は名瀬(現在の奄美市)に住んでいたから父の故郷の奄美大島北部の笠利町・赤木名の墓参りには何度か行った。子供心にも近親たちの先祖の死者たちとの交流は都会にはない親密なものであったと記憶している。末っ子だった父の遺骨は慣わしにより故郷の墓に埋葬できず都下の墓所に納めた。奄美の墓地に比べれば実に無味乾燥な墓所であるけれども。

 昔と違い都会に住む現代人の死は多くが病院での治療の末であろう。父も京都の病院だった。呼吸補助のチューブを喉に入れられている姿は最新の医療器具によって生かされているだけという風情だった。母の入院している病院を1年ぶりに訪れ、改めて医療の現場というものは戦場のようなものだと思った。時々刻々、状況は変化する。医師や看護師たちは臨機応変に対応しなければならない。さいわい入院した病院の対応は好感が持てる。食事も母は美味しいと喜んでいる。身体は思うように動かず忸怩たるものがあるだろうが、看護される方々や見舞いの方々への感謝は人一倍感じているようで安心もする。対面のベッドには手術を終えて搬送された中年の女性患者がいらっしゃる。看護師さんたちに痛みを訴える姿を見れば病の苛酷さを改めて痛感する。

 余命がどれくらいあるか医師も知る由はない。しかし老いと晩節を生き抜く者の苛酷には出来る限りのことはしたいのが人情というものだ。埼玉から大阪に移り住んで4ヵ月が過ぎた。その間、心がけた気持の如何ほども出来ていないけれども最期へ向けて粛々と怠りなく日々を過ごしたいと思う。

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コメント

昨日からづーっと、何とお書きしたらと考え込んでいました。そして、心が空を廻っていました。

<最期へ向けて粛々と怠りなく日々を過ごしたいと思
う。>

アカショウビンさんの心の奥のお覚悟がひしひしと感じられて何も申し上げることが出来ません。

「だったらコメントなど書くな」と言うことですが。

こんなことでも書かざるを得ませんでした。

投稿: 若生のり子 | 2009年8月20日 (木) 午後 10時42分

田舎者なもので逆に七月の盆がピンと来ません。

救急対応の病院は それこそ病状が安定し無いので大変でしょうね。


救急車って案外スプリングが硬く乗り心地は悪い様です。


投稿: snokey.F.164 | 2009年8月20日 (木) 午後 11時06分

 若生さん

 いつもコメントありがとうございます。「怠りなく」とは書いても怠りっぱなし、なのが現実です。母は生きようともがいています。それは執着とか未練ではなく或る意味で「純粋」に生を終えたいと意志していると言ってもよいでしょう。また訳のわからない言い方になり恐縮ですが。数年前でしょうか、正月に帰ったとき「私は死ぬ事は怖くはないよ」と漏らしたことがあります。そのとき母は70歳を過ぎ老いと死を覚悟していたのでしょう。その言葉の響きに私は母を一人暮らしにさせて勝手に生きている自分の不甲斐なさを心の底で悔いました。しかしアホは死ななきゃ治らないのでしょう。それから何の手を打つこともなく過ぎてしまったのです。この間の経緯は書けば長くなりますので、いつか明かせることもあるかと思います。
 私などは、いつでもいいから早く娑婆とはオサラバしたいと思うのですが、母の姿を見れば、そんな言い方は少し不遜かな、と反省もします。しかし私は頭のなかと肉体的にも母の「純粋」な生への欲動とは反対のベクトルで、この世での生に執着しないように生き死にたいと思うのです。それは思想・生き方の違いというしかありませんが。

 snokey.F.164さん

 地元紙の記事によりますと、奄美大島の多くの地区が旧暦にあわせた旧盆で行っているようです。ところが奄美市の一部の地区や徳之島では「島外で暮らす出身者の帰省の便宜を図るため月遅れ盆が定着し」ているようです。父の死以来20年近くも帰省していない私にはお盆など語る資格はありませんが原爆や敗戦の夏に死者たちのことを想い起こすことはお盆で先祖たちの霊のことも少しは殊勝に考える時なのであります。
 
 >救急車って案外スプリングが硬く乗り心地は悪い様です。
 
 ★おっしゃるとおりです。それを身をもって体験しました。

投稿: アカショウビン | 2009年8月21日 (金) 午前 06時47分

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