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2009年7月25日 (土)

この百年

 毎日新聞に掲載されている存命なら今年で百歳になる作家の特集記事が面白い。これまでに登場したのは大岡昇平、中島 敦、太宰 治、シモーヌ・ヴェイユ。先週は花田清輝だった。アカショウビンは「復興期の精神」や吉本隆明氏(以下、敬称は略させて頂く)との論争で記憶している人だが、そのユニークな言説で西洋ルネサンス時代まで照射する才覚は見事に思えた。ルネサンスへの言及は林 達夫の論考と共に面白く読んだ。評者の川本三郎が指摘しているように映画評論も面白く、ゴダールやアンジェイ・ワイダの「灰とダイヤモンド」(1958年)評が花田らしい。黒澤 明の「椿 三十郎」(1962年)で主役の三船敏郎より脇役の奥方、入江たか子や団 令子に注目するのも共感する。

 花田の持ち味は「道化の精神」というものである。吉本の「直球」より花田の「変化球」の柔軟性は今改めて読み直す価値があると思うのである。1909年(明治42年)から百年という歴史的時間は大正・昭和・平成と先の大戦を経て日本国にとって大きな「転形期」(@花田清輝)となった時代である。この時代にレトリックを駆使し真面目をからかう精神は大切である。

 昨日の毎日の夕刊で研究のため西アフリカで9年間を過ごした川田順造へのインタビューも面白い。1960年にフランスから独立したブルキャナファソという国はモシ王国として栄えた。モシの民は文字を持っていない。表現やコミュニケーションが優れているから文字を必要としない、と川田は言う。彼らには「今生きている私は、祖先や、これから生まれてくる者たちも含めた人間の一部だ」という感覚がある、とも。私個人で完結せず、「私たち」で共生する。

  個人の優位を主張する近代人は、この感覚を失ったのではないか。ニーチェの言う「生」の感覚。ハイデガーの説く「有」(存在)から「立ち去られた」ギリシア以降の西洋の運命という告発が、そこに反響している。百年の変化は更に200年、300年と遡り、人類の歴史の中で文字を持たなかった頃まで「起源」として考察し、我々が生存している現在を反照し思考しなければならない。

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コメント

こんばんは。
 
記事と関係ないコメントで甚だ申し訳ないのですが、
うちの新聞で今回初めてコラム書きました。
A氏がよく書いているので僕もと思っていたのですが
ようやく実現できました。
92行を74行に削ることにはなりましたが。

ただの「コラム」ではつまらないので 
「つけものブログ」にしました。
ネットではないので正確にはブログではないですけどね。
次号用のもすでに書き終えました。

改めて思うのは、(商品紹介や会議などの)新聞記事と、
ある意味自分の思っていることを書けるコラム的な記事は
まったく別物だなということです。
僕が言うのもおこがましいですが、アカショウビンさんの
ブログの記事には感心させられます。
僕にとっては少し難しい表現もありますが、だからこそ余計。
新聞記事上では、個性があまり発揮されづらいこともあって、
実際の文才のほどは正直よく分かりませんでした。

逆に、新聞記事がうまいからと言って、単純に一般的な文章力
もあるとは僕は思いません。
性格的なこともあって?新聞記事だとどうしても型にはめて
しまうというか、冒険できないというか。

おそらく、うちの社員(元社員含む)でブログやっているのは、アカショウビンさんと僕くらいですね。
だからどうだってわけではないですが、好きなこと書かせたら
もうちょっとましな文章書けるよという気持ちもありました。
あ、もちろん、新聞で書くコラムは仕事に関係あることです。
コラム書く時間あったら、自分のブログ更新した方がいいなんて思っていたんですが、始めたからには続けたいと思います。
そんな時間あったら営業しろと言われないくらいのペースで(笑)。

長文失礼しました。

投稿: たじまる | 2009年7月26日 (日) 午前 12時32分

 たじまる君、コメントありがとう。


 >A氏がよく書いているので僕もと思っていたのですがようやく実現できました。 
 
 ★それは是非読ませて頂きたいね。

 >改めて思うのは、(商品紹介や会議などの)新聞記事と、ある意味自分の思っていることを書けるコラム的な記事はまったく別物だなということです。

 ★「自分の思っていること」、これを自分の言葉で読者に伝える事はナカナカ難しいことですが、それがあなたの仕事でもあるわけです。A氏とは異なる個性を思いきっり発揮してください。

 >コラム書く時間あったら、自分のブログ更新した方がいいなんて思っていたんですが、始めたからには続けたいと思います。

 ★それは是非とも続けてもらいたいね。

 >そんな時間あったら営業しろと言われないくらいのペースで(笑)。

 ★営業やりながらでも出来るよ。

投稿: アカショウビン | 2009年7月26日 (日) 午後 06時25分

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