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2009年5月 8日 (金)

秀行、逝く

 将棋名人戦の第3局が行われている日に囲碁棋士、藤沢秀行の訃報を夕刊で知った。破天荒な生き様と囲碁に対する純粋な姿勢は多くのファンを持ちアカショウビンも多大の関心を持ってきた棋士である。アル中で競輪・競馬好き。昔気質の勝負師だった。碁への求道的な姿勢は中年を過ぎてから棋聖などのタイトル獲得、防衛に結実した稀有の棋士でもある。

 アカショウビンは、そういう秀行という棋士の人となりを伝え聞き、棋譜を並べることで囲碁の世界に分け入ってきた。囲碁も強い米長邦雄・将棋連盟会長との交遊も面白かった。同じ勝負師同士の世間的な付き合いを超えたもののように思えたからだ。勝負の修羅を経験した者同士でしかわからぬ阿吽の呼吸がそこに感得された。その生き様はアカショウビンがかつて愛読した開高 健の随筆にも登場する。それは実に可笑しく面白い秀行の姿が切り取られている。開高と秀行は、かつてご近所同士だったのである。それで益々囲碁はともかく人物に魅かれた。人は、そのようにも生きられる、ということに驚愕し感嘆する。

 ガンに罹患しながらも3度の手術を経て10年以上生きたことにも驚く。98年に現役を引いてからは書の世界にも遊び一芸に秀でた者の融通無碍を知らしめた。

 韓国、中国へも何度も遠征し国籍に拘らず後進の指導に努め碁の真理を追い求めた。その姿勢に日本、中国、韓国には多くの後輩がいて尊敬を集めている。ライバルの23世本因坊・坂田栄寿氏のコメントが心にしみる。「対戦成績は私の方が良かったが、才能は私よりあったと思う。昔かたぎの棋士の一人で、秀行さんのような棋士は二度と出ないでしょう」。83年の生涯は破天荒だが囲碁の純粋な求道者だった。心から、お疲れ様でした、と労いたい。

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