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2008年10月 7日 (火)

緒形 拳 追悼

 緒形 拳の顔と姿に鮮烈に出会ったのは中学生の頃に観たNHKの「太閤記」だった。飄々として愉快な秀吉を実に面白く見た。信長役の高橋幸治、石田三成役の石坂浩二も想い出す。浪花千栄子、藤村志保も。アカショウビンが大河ドラマを夢中になって観たのは第6作の「竜馬がゆく」までだった。珍しくマメにみたのは「風林火山」。脇役で緒形 拳が実に渋く味のある演技をしていた。

 高校時代に新国劇の辰巳柳太郎の舞台を見て俳優になることを決意したという。辰巳の姿をスクリーンで観たのは「人斬り」(1969年 五社英雄監督)が鮮烈だった。冒頭シーンで吉田東洋役の暗殺シーンを見事な殺陣で演じた。この一作で辰巳柳太郎という役者の存在感を了知し、緒形が惚れ込んだ理由の少しを然と納得した。石原裕次郎の見事な大根役者ぶりと三島由紀夫の堂々とした俳優ぶりも想い起こす。

  長じてテレビ少年から映画狂に変貌したアカショウビンが「太閤記」の秀吉以来、見事な俳優として記憶に留めたのは「鬼畜」(1978年 野村芳太郎監督)「復讐するは我にあり」(1979年 今村昌平監督)だ。「砂の器」「楢山節考」「火宅の人」「女衒」と傑作、佳作に出演し名優として評価を得たものと確信する。

 アカショウビンが最後に観た作品は、この夏にNHKで放映された「帽子」というドラマだった。広島で原爆に被災した男女の生死を描いた佳作だ。ドラマでは恋人役の田中裕子が死に、緒形 拳は生き残る役だった。出演作品は選んでいたという。「太閤記」以来、最後に良い作品を観られてアカショウビンは満足だ。現在の長寿社会からすれば少し早い死だが、俳優として見事な一生だったと哀悼する。(以上、敬称略)

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