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2008年6月 5日 (木)

晩年の巨匠と名ドラマー

  オーケストラのリハーサルのナマを何十年ぶりかで体験したのは昨年7月。売り出し中の若手(でもないか)パーヴォ・ヤルヴィ指揮するドイツ・カンマーフィルの公開リハーサルを幸にも無料で聴けた。曲目はベートーヴェンのトリプル・コンチェルト。この第3楽章をアカショウビンは偏愛する。しかもソリストはわれらが諏訪内晶子。ストラディヴァリだか何かの名器の、何年製か知らぬが名器を名手が奏でる楽音は実に芳醇な響に満ちていた。

 そんな事も思い出させたのは先日購入したDVDのせいである。往年のコンサートの模様と晩年のデューク・エリントンの姿が映像に留められている。後者のタイトルが「デューク・ザ・ラスト・ジャム・セッション」。4人の名手が紡ぎだす演奏は音の神とでもいうものが生み出される瞬間に立ち会う悦びと言っても差し支えない。

 2枚組DVDの1枚は、かつてレーザー・ディスク(!)で発売されていたもの。アカショウビンも大枚をはたいて購入した。デュークがフランスのコート・ダジュールで手兵のオーケストラを率いて行ったコンサートとエラ・フィッツジェラルドのコンサートが収められている。他にもホアン・ミロを訪れたデュークと仲間がミロのために庭で演奏するシーンもある。

  もう一枚がデューク・ファンならずとも必見の記録だ。デュークのピアノにギターのジョー・パス、バスのレイ・ブラウン、ドラムスのルイ・ベルソンの4人の名手がリハーサルをかねて音楽を作っていくプロセスが実に面白い。名手たちの阿吽の呼吸とでもいう丁々発止の音楽は「音楽の誕生」とも、何やら不可思議な素晴らしきものの生成に立ち会っている思いに浸らされる。デューク・エリントンのピアノ良し。若いレイ・ブラウンの勢い楽し。ジョー・パスの自在なギターも格別。しかし、唸るしかないのはルイ・ベルソンの姿とドラムスである。

 アカショウビンは不覚にもルイ・ベルソンというドラマーを知らなかった。このDVDで初めて知る。「何だルイ・ベルソンも知らないのかよ~。それで恥ずかしくもなくジャズファンだと言えるよな~」という御仁もおられよう。しかし新たな発見というのは嬉しいもの。その喜びを諸氏諸淑女にお伝えしたいのである。

   このDVDでは老齢に至り悟りの境地のような巨匠の融通無碍が拝見できる。それに名ドラマーが実に表情豊かに絶妙の呼吸で合わせていく。それは巨匠への尊崇とともに、熟練したプレーヤーの到達した境地を垣間見る思いだ。正に至芸である。この106分の映像は巨匠の晩年の円熟と自在を記録すると共にルイ・ベルソンという名手が巨匠と共に生み出す稀有のプレイを見事に残している。

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