« ベートーヴェンとは何者か?(続き) | トップページ | ふたつの「謝肉祭」 »

2007年11月19日 (月)

やせ細る言葉

 辺見 庸氏の最新刊「たんば色の覚書 私たちの日常」を読んだ。闘病中の氏の渾身の著作である。その中で共感を持って読んだのは氏が京都の講演会で話した「雨を見たかい?」というCCR(クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル」のヒット曲を説明する箇所だ。

 タイトルの「Have you ever seen the rain」の「雨」がベトナム戦争で米軍が使用したナパーム弾の形容であるとは知らなかった。1971年の全米チャート8位。日本でもヒットしアカショウビンもよく聴いた。辺見氏はその事を共同通信社の記者として北京から米国に移った「研修留学」でカリフォルニアのバークレーのジュークボックスでアメリカ人の客から教えてもらったと書いている。「shinin'down like water」という歌詞の「キラキラ光りながら雨のように降り注ぐ」。それはベトナム戦争でベトナム人民を殺戮したナパーム弾であることを知り己の無知に呆れ佇む。当時その曲は放送禁止または放送自粛曲になり今でも南部の保守的な州ではこの曲の放送を自粛しているという。

 この著作は8章で構成され、京都講演の内容は「私たちの日常-<決して有用でないもの>への視線」という表題になっている。

 その前の章の「剥がれて」は殆ど詩である。氏の言葉への執念とでもいう内容だ。ハイデガーは先の大戦後に、言葉がやせ細ってきている、と警告を発している。辺見氏の著作は作家として、そういった警告にも応じている言説であることを読み逃してはいけない。

|

« ベートーヴェンとは何者か?(続き) | トップページ | ふたつの「謝肉祭」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/111335/17117224

この記事へのトラックバック一覧です: やせ細る言葉:

« ベートーヴェンとは何者か?(続き) | トップページ | ふたつの「謝肉祭」 »