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2007年8月 9日 (木)

戦争の記憶

  昨日の午後、渋谷へ久しぶりに足を運んだ。この街は前職の仕事で通過するか、CDショップを覗くか、小劇場でしか上映されていないマイナー映像作品を観に行くか、の三択である。今回は後者。90歳を越えた映画作家、というより生涯シナリオライターの自覚が見事な新藤兼人監督の原作・脚本・証言、山本保博監督による「陸(おか)に上がった軍艦」を観に。老いてなお矍鑠たる氏の執念漲る作品を拝見した。この夏、未だ先の戦争に御関心のある方には是非ご覧になっていただきたい作品である。同じビルの別のスクリーンでは他の新藤作品も日替わりで上映している。
 ここで内容の説明は割愛する。前回の小田 実的史観からすると、これは内地の「戦場」で過酷な「戦闘」を経験した兵士の虫瞰図的体験談である。将軍や将校の視線でなく最下層の兵士予備軍の。
 戦争は家族、家庭を破壊する、とナレーター役の新藤さんは穏やかに、時にユーモラスに、朴訥に、ゆるゆると、しかし明晰に語る。それを深読みすれば、人間をも破壊する、と。その発話の奥に垣間見られるのは氏の執念の如きものである。
 召集された100人のうち生き残ったのは新藤さん含めて6人。これが戦争というもので国家の本性というものだ、と新藤さんは含羞もてキャメラに向かい語りかける。
 戦争には負けたが、これでやっとシナリオが書ける、と大っぴらに口には出来なかっただろうが、本音はそうだと了知される表情が好かった。
 昨夏は黒木和雄監督の遺作となった「紙屋悦子の青春」に頭が下がった。今年は黒木氏より年長の新藤さんが自らの戦争体験を映像化された。その執念と飽くなき作家魂を言祝ぎたい。

 苦言を呈すれば、この劇場で上映されている他の新藤作品が一本1300円というのは決して良心的ではない。これでは若い人が全作品を観るのにいくらかかるというのだ?概算すると3万2千5百円ではないか!新藤作品は中高年がノスタルジーで見る作品ではない。それを興行師は意識に上せているのか!フィルムセンターなら二本立てで300円で上映するところだろう。

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コメント

 丁寧なコメント、ありがとうございます。終戦の日、徹子の部屋に出演されている新藤兼人監督の凛々しい姿を拝見し、じっと見つめてしまいました。次回作は、原爆が落ちた瞬間のわずか数秒の出来事を映像化するとか。残酷なカットも目をそむけないで観てほしいと、意欲を持ち、構想はあるけれど、制作費がない。娯楽映画ではないので困難だと思いますが、是非、新藤兼人の頭の中を映像化させてほしいと願う一人です。
 「裸の島」は、本当に素晴らしい作品ですね。観るものを黙らせてしまう凄い力があります。何度観ても、私は力が入ります。まだ、「陸(おか)に上がった軍艦」は楽しみに残してあり、古い作品を観てからと思っています。
 旧作・・・東京は1,300円とのこと。大阪では、会員になると900円で観ることができますが、普通料金は100円高くて1,400円です。経営の苦しいミニシアターで上映されていますが、人入りもいいようで一安心。安く、若い人たちが観てくれることはできないのか・・・私も感じています。読ませていただきました。ありがとうございます。これからも宜しくお願い致します。  冨田弘嗣

投稿: 冨田弘嗣 | 2007年8月17日 (金) 午前 12時47分

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 <九条シネ・ヌーヴォ>  昨日は、ブログを書くうちに夜となり、結局はパソコンの前に座りっぱなしだ [続きを読む]

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