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2007年4月 7日 (土)

映画寸評

 ここのところDVDで観たなかでは「かもめ食堂」が評判に違わぬ佳作だった。映画館まで足を運んだ「マリー・アントワネット」は何と女性客が8割くらい!仕上がりは悪くないけれど、あれで歴史事実を知ろうとする観客は何割いるだろうか。余計なお世話だろうけど。「バルトの楽園」も大味の感が否めない。カラヤンの第九を使ったのは商業主義で許すとして予定調和的な物語が予想と違わなかったのが残念。「明日の記憶」はなかなか。このシリアスな作品も渡辺 謙の好演が作品を支えている。「硫黄島からの手紙」と並行して出演していたのだろうか?「ラスト・サムライ」「サユリ」「硫黄島からの手紙」と観てきて、今もっとも充実した役者生活を生きておられる俳優と拝察する。

  「亀は意外と速く泳ぐ」は新感覚というところか。フーン、ホーホー、オットットットと脳髄が反応した(笑)。主演の上野樹里の味を生かした好作。「かもめ食堂」のさわやかで本格的な凝り方とは対極の笑いが今風。「茶の味」にも通じる。エンディングは「かもめ食堂」と同じ構成。これは決して独創ではないような。オリジナルは米国製か?

 この「遊び」の精神は賛同する。この精神の水脈は日本映画史に確かに存在する。たとえば岡本喜八。「肉弾」、「独立愚連隊」など戦中派が戦争を描いて「遊び」と「諧謔」に満ちている。それは鈴木清順にも通じる。喜八とは異なり清順にはシュールさがある。三木 聡という監督の作品も今風のシュールというところを俳優達やスタッフが面白がって作品が出来上がっている。決して重くならず、軽やかに日常を笑う、その精神を言祝ごう。

 ところで「かもめ食堂」。料理のシーンを扱う手際に女性らしさが感じられる。アカショウビンは伊丹作品を想い起こした。あの作品は何だったか。料理へのこだわりが面白かった。映画で男と女の性差は料理のシーンを扱う手際に如実に現れる、というのは定理なのではないか?「かもめ食堂」は小津安二郎的慎ましさを保ちながら全編をまとめていたのが花丸だった。海外にも小津派がいる。ジム・ジャームッシュも確かそうだったはず。「ブロークン・フラワー」は小津調が随所に見られたが少し期待はずれ。

 「かもめ食堂」に好感が持てたのは全編ヘルシンキ・ロケという宣伝はともかく画面に北欧の空気と風を感じさせる光線を映像化し得たと感じさせたところだろうか。ハリウッド映画に食傷している者としては、こういう穏やかな台詞と、こだわりが伝わってくるキャメラの映像は実に好もしい。特筆すべきはエンディング曲。井上陽水の「クレイジーラブ」が素晴らしい効果!監督のセンスに激しく同意。陽水の声の何と軽やかで強靭ですてきなこと!音と映像の掛け算(@黒澤 明)という映画の面白さを見事に最後の曲の選択でまとめたセンスに快哉。

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