« 討ち入りの日 | トップページ | 死に果てた者たちへの負い目 »

2006年12月17日 (日)

「硫黄島からの手紙」

 昨日、先の大戦の激戦地である硫黄島の戦いを日本軍側から描いたC・イーストウッドの新作「硫黄島からの手紙」を観てきた。先に公開され米国側から描いた「父親たちの星条旗」に続く作品である。それにしても、両作品を観て、どう論評すればよいか迷うというのが正直なところだ。何故、監督は、今頃、あの戦争を描く作品を撮ったのか。意図がわからない。齢76歳になり「歴史」に突然向き合おうと思ったのか?それとも他に意図があるのか?

 先に公開された「父親たちの星条旗」で述べたアカショウビンの先のブログの印象は本作で払拭されたわけでもない。来日時のインタビューに対するコメントは「戦争にヒーローはいない」と言うものだがマスコミ対応用のものと邪推される可能性もあるのではないか?

 なぜなら本作で描かれる栗林中将を監督は「ヒーロー」として捉えているのではないか?それは映画作品として商業主義の仕方なさと見なすことは可能だ。恐らくC・イーストウッドは渡辺 謙という俳優に惚れたのだと思う。「ラスト・サムライ」、「サユリ」と出演した米国映画を監督は見ていると思われる。この作品の中での渡辺 謙も実に考え抜かれた演技をして立派である。その演技と演出は素直に評価しよう。また日本人として面映くも感じる。

 しかし「作品」の仕上がりとして果たしてこれまでの戦争映画とどれほどの差異があるのか。キャメラのくすんだ色調も悪くない。だが憲兵達が日章旗を掲げていない家屋を尋問するエピソードの日本家屋は「サユリ」に多くの人が感じた違和感の域と同じようにアカショウビンも感じた。「サユリ」が某小説家の言う如く「国辱映画」とアカショウビンは思わない。しかし作品の統一性としてそういう未消化とも言えるエピソードを挿入する必然性に疑問も持った。

 本作に対する批評の幾つかを読んだが、その中に「米国人から本当の日本人が初めて描かれた」という批評があった。しかし、果たしてそうか?と問わなければなるまい。

 事は国民や生活民のメンタリティと関わってくる。友人のN村君は戦争を扱った邦画に欧米の作品の「レベル」がないのは何故か、という疑問も呈した。アカショウビンは内外の戦争映画をそれほど観ているわけではない。しかし、これまで観たなかでフレッド・ジンネマンの「ジュリア」やS・キューブリックの「フルメタル・ジャケット」の秀作を観ればN村君の慨嘆がわからなくもない。

 それはともかく「硫黄島からの手紙」という作品に満腔の賛意を表することが出来なかった理由は更に明確化しよう。少し時間はかかりそうだが。

 

|

« 討ち入りの日 | トップページ | 死に果てた者たちへの負い目 »

コメント

コメントに感謝!

私も本作には、ヒーローの件で少々疑問点があり、感想をアップできないでいます。

2年前に、公の場で、沖縄戦の生き残り兵士の証言を聞いたことがあります。
本作では、ヒーローの栗林が、「○○○○バンザーイ」と言い、
自決者が最後に「○○で逢おう」と言いますが、
私が聞いた兵士は、そういう言葉を発する者は皆無だった、とはっきり言いました。

そういうことは、他の人からも聞いたことがあります。
映画の中のような言葉を口にした人がいたとしても、ホンネではないのでは、と思います。

とくにヒーローが発した言葉は、多くの人に何らかの影響を与えるのではないでしょうか。
あれだけの人物がそういうのだから・・・、と知らないうちに刷り込まれることも考えられます。

現に、所属する映画サークルの若い女性のメンバーが、私のそうした発言に対して、「何か意思統一の言葉がないと、死ぬに死ねないから、(記号として)そういう表記があってもいいのでは」と言いました。
彼女は、深い考えのもとに言ったのではないようですが、昨今の日本社会のなかでは、笑って見過ごすことはできない意見です。

クリントは、「死」を見据えた作品づくりをしていますが、日本人ではないので、こうした微妙な部分はどうなんでしょうか。
仰るとおり、非国民の家や美しい着物姿などにも違和感を感じました。

大まかなところでは、なかなかやるなあ、と評価していますが、手放し
という訳にはいきません。
「星条旗」はアメリカの視点、「硫黄島」も日本側の戦をアメリカの視点で撮ったのだと思います。

投稿: マダムクニコ | 2006年12月26日 (火) 午後 03時20分

こんにちは。
大道芸観覧レポートという写真ブログをつくっています。 映画「硫黄島からの手紙」もとりあげています。 よかったら、寄ってみてください。
http://blogs.yahoo.co.jp/kemukemu23611

投稿: kemukemu | 2007年1月12日 (金) 午後 10時32分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/111335/13099752

この記事へのトラックバック一覧です: 「硫黄島からの手紙」:

« 討ち入りの日 | トップページ | 死に果てた者たちへの負い目 »