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2006年7月 6日 (木)

偉大な芸人列伝

 「過酷な寓話的禁欲」を強いられた状況を無自覚にヨーロッパの人々は生きている、というのがフーコーの告発である。「理性」が主導する西洋の歴史の、それ以前と、それ以後の「境界-極限」をフーコーは執拗に思考する。ヨーロッパの人々の無意識とは無縁の極東の島国でアカショウビンは彼らが禁欲の苦痛から産み出した芸術作品を面白く鑑賞する。それはフーコーからすれば不可思議な現象ということになるのかもしれない。

 海の向こうからミサイルが飛んで来るという、まさに現代の寓話的状況も加味されて、歴史的現実は倒錯の極点が裏道で密かに細々と行為されるのでなく一瞬にしてメインストリートで繰り広げられる、という事実を我々はアフガニスタンやイラクやニューヨークで目の当たりにしたばかりである。それはさておき。

 アカショウビンが若い頃に観た「ザッツ・エンターテインメント」というMGM社のミュージカル作品を抜粋して編集した映画があった。これには心底から驚かされた。それまでに観たミュージカル映画といえば「サウンド・オブ・ミュージック」、「マイ・フェア・レディ」、「屋根の上のバイオリン弾き」など評判のいわゆる定番名作だけだったからだ。それがあの作品の中には、果たして日本で上映されたことがあったのか、初めて名を聞くけれども実に圧倒的で魅力あふれるダンスが繰り広げられているミュージカルが幾つも紹介されていた。それらを抜粋でなく全部観たい!これから先何本観られるか?それが将来に出会うアカショウビンの切実な幸せのひとつだったのだ。

 一昨年かには「キス・ミー・ケイト」がDVDで安く買って観られた。アン・ミラーのダンスの素晴らしさったらないのである!アメリカ文化の粋がそこにはあると確信する。それからだいぶ時は過ぎたが今夜はもう一作品を観た!

  「イースター・パレード」だ。何と500円でDVDが買えたのだ!何と幸せなアカショウビン君!これで、いつ死んでも、残る未練のうちの一つが消えたわけだ。

 そこにはアン・ミラーも出演して見事なダンスを見せてくれるが主役はフレッド・アステアとジュディ・ガーランドである。偉大な芸人と評するだけでは足りないくらいアステアのダンスは見事だ。融通無碍の境地というのは正にこのダンスを言うのであろう。名人、あるいは悟った名僧とも称してもよい人物がそこで踊っているではないか!悟りの境地を不遜ながら映像化するとすると、ここにそれが現象化しているではないか、とアカショウビンは不埒にも直感するのだ。紳士、淑女の皆々様!おい、おい、それは少しオーバーな、というなかれ。 

 インテリ達がどんなに眉をしかめようと、アステアやアン・ミラーの身体の動きには人間という生き物の、それは才覚に裏付けられているとはいえ、過酷な苦痛も伴ったであろう訓練の末に到達した快楽が表現されている。それはとりあえず倒錯的な寓話的快楽とでも称しておこう。アカショウビンが将来書き連ねるであろう、「偉大な芸人列伝」の中には、フレッド・アステア、ジーン・ケリー、そしてアン・ミラーの3氏が先ず記載されるはずだ。この列伝、果たしていつ日の目を見るか知らぬが、乞うご期待!

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