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2006年3月 9日 (木)

春の夜の夢

 枕だに知らねば云はじ見しまに君語るなよ春の夜の夢

 これは保田與重郎が「和泉式部私抄」で挙げている(p60)式部の傑作という新古今にも撰ばれた歌である。「女歌のほまれはこの一首に極つたのである」と保田は激賞している。その前には

  變らねば文こそ見るにあはれなれ人の心はあとはかもなし

の歌がおかれている。 「その作品には時代人間を超越した崇高さが感じられる」とする保田は

  願わくは暗きこの世の闇を出でて紅き蓮の身ともならばや

という歌も引く。紅き蓮は当時蓮華往生と解釈されていたのを、川田順氏が地獄の紅蓮の焔だと解釈した。なるほど、そう取れば式部の激情がそこに躍如しているようにも読める。

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