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2005年11月11日 (金)

歌姫

 30代半ばの女性歌手が病で亡くなった事を知り、ご家族やファンの気持ちを察すると痛ましい思いだ。彼女が出演した評判のミュージカルは見てみたかった作品だった。華奢な体で歌い上げる細い声はアカショウビンの好みではないが、そこには好みを超越した歌心を聴き取る多くの人々がいたのだと思う。アイドル歌手がそこに至るまでの道程の労苦を想像すれば早すぎた死に運命の過酷さを感じ取る。

 本物の歌い手というのがあるとすれば、それは本人の才覚と歌いたい!という意志と歌詞の内容と声で伝えようとする何か、が聴き手の心と響きあい、その聴き手(聴衆)と共に育っていくものだと思う。国民歌手という表現は好みではないが確かにそういう歌い手が共同体や国(クニ)や民族に現れることがあるのではないか?そして世代にも。

 そういう存在を歌姫と称するとするとアカショウビンにとっては中島みゆきである。ラジオのディスク・ジョッキーから想像する彼女の「素」や実像はさておく。しかし歌に表現される力(パワー)はこちらを挑発し鼓舞する。失恋の哀しみを歌う女心は愛しさに溢れて胸を締めつける。もちろんそれだけではない。彼女には何か底知れない歌心があるのを感じるのである。声が良いともいえない。しかし歌詞と歌があふれる「歌壷」とでも言うしかないものを彼女はもっていると思われる。そんな我等の中島みゆきに対する同世代での異論は認めない(笑)。しかし偏見の塊であるアカショウビンも聴く耳は持つ。楯突くならそれなりの覚悟でコメントしてきていただきたい(笑)。

 中島みゆきに入れ込むアカショウビンの詳しい理由はいずれ書くとして、30代で亡くなった女性歌手も同世代や世代を超えた彼女の心底の聴き手にとってはアカショウビンにとっての中島みゆきかもしれない。彼女が歳を経て50代になりアカショウビンのように同時代で中島みゆきの今の歌を聞ける喜びを彼女のファンが味わえたらどんなに幸せなことかと悔やまれるのである。

 しかし30代の死も寿命と思い切るしかない。人間存在の理不尽と面白さは個々の自己が背負うしかないものと覚悟すべきものと思われる。

 人間の歌もハイデッガーが洞察した如く言葉と同様に存在の根底から発現したものは本来の響きに死の影を宿し、そこに喜怒哀楽が込められ他者の心に共鳴するのだと思う。

 なにやら訳がわからぬ言い方に聞こえるかもしれないが、ヒトの死を語りながら、死という、それは現象と言っていいのか保留して言うのだが、それに近づこうとすると、そんなまわりくどい言い方になってしまうのである。

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コメント

先日、木原武一著「孤独の研究」を読みましたが、第三章はグレン・グールドについて述べてあり、とくに死の前年に録音したバッハの『ゴールドベルク変奏曲』をいたく絶賛していますが、アカショウビンさんは聴いたことがあると思いますので、ぜひご意見をお聞かせください。ちなみに、著者の若い友人であるクラシック・ファンの二十代の若い友人は、「いい音楽だけど、やはり、暗い」と言ったそうです。

投稿: shouji | 2005年11月11日 (金) 午後 06時32分

 shoujiさん、コメントありがとうございます。グールドが晩年に録音したバッハの「ゴルトベルク変奏曲」はアカショウビンもLDで聴きました。最初の、一躍グールドの名を世界に轟かせた録音と比べるとテンポの遅さに驚きます。たとえばクレンペラーのように指揮者が高齢になって若い頃よりテンポが遅くなるというのはよくあることです。ところがグールドはまだ死の前年とはいえ49歳です。まだ老け込む歳でもありません。
 うがった見方をすれば、死を予感したグールドが自分を既に晩年と察知して自ずとテンポがあのようになったのかもしれません。それにしても一音一音、噛み締めるように、また音を愛玩するように、ピアノに向かうグールドの姿は20代、30代の快活さこそありませんが天才がピアノと一体になっている、ある種の狂気さえ感じました。また頭髪も薄くなり時の経過も思い知らされました。
 「いい音楽だけど暗い」というのはグールドを評しているのかバッハを評しているのか、多分グールドでしょうが、「暗い」でグールドを片付けることは勿論できません。バッハの他にも実にユニークなモーツァルトのピアノ・ソナタ集や新ウィーン学派への造型の深さなどを聴けば、その天才には驚くしかありません。
 アカショウビンは先日、グールドがデビューした後に訪れたロシアでの様子を編集したDVDを購入し見ました。これは貴重な映像ですが演奏会の映像は記録されていません。CDでは確か発売されていたような気がしますので調べて聴いてみようと思います。

投稿: アカショウビン | 2005年11月12日 (土) 午前 10時34分

http://blog.livedoor.jp/mayuge_suzuhiko/archives/50006798.html

アカショウビンさん、このURLを見てください。
ネット同窓会を作りました。

投稿: まゆげ氏 | 2005年12月15日 (木) 午後 10時10分

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