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2005年6月10日 (金)

追悼 塚本邦雄

  塚本邦雄が亡くなった。短歌には殆ど親しむ事のなかった私だが、学生の頃に氏の幾つかの著書を読み、それ以後は新聞に載る散文や短歌に時々出合い、はっと立ち止まるくらいの、実にいいかげんな読者だった。それは恰も、間欠泉に見とれ、オォッと感嘆し畏敬し、奇景に驚くが、それが終わると他の場所へ移動し、そのころにはあの姿と驚きをすっかり忘れている、といった観光客のようなものだった。

切って棄てたる愛國心の残臭と黴雨あけ塵芥函(ごみばこ)の濃紫陽花(こあじさい)

この破調の歌は何年か前、たぶん新聞に掲載されたものをメモしておいたものだ。久しぶりに氏の歌に出合い、愛国心、という氏が生きた若い頃の時代の空気が伝わるような、それに塵芥箱に捨てられた濃紫陽花という対比が痛烈で、作者の激情と歌の象徴に脳天を撃たれた気がした。

氏はシャンソンなど音楽にも造詣が深く、今では古典音楽のように演奏される機会も多くなったオルフのカルミナブラーナなどは氏の著書で教えてもらった作品だ。定家への愛着と造詣も私にとっては遥かに見る高峰のような偉大な知性だった。

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